初心者の味方!濃旨好きは『パーカーポイント』の高いワインを選ぼう

パーカーポイントってなに? ワインの選び方 解説します

棚にズラリと並んだワインの中から、好みに合ったものを見つけるのは大変です。

どのワインを買ったらいいのかわからなくなったら、他人の評価を参考にしてみましょう。

今回は、世界的に有名なワイン評論家ロバート・パーカー氏がつけるワインの点数、『パーカーポイント(PP)』の説明と、パーカーポイントを使ったワインの選び方をご紹介します。

『パーカーポイント』ってなに?

パーカーポイントとは 調べる

世界で一番有名な「ワイン好き」がつけているワインの点数

パーカーポイント(PPと略される)とは、100点満点方式を使ったワインの評価基準のこと。世界的に有名なワイン雑誌、「ワイン・アドヴォケイト」で定期的に公開されています。

採点をしているのは、「ロバート・M・パーカーJr」というアメリカ生まれの世界一有名なワイン好き。最低限の品質をクリアしているというワインを集めて、各ワインに持ち点を50点与えた上で、

ワインの色や見た目
香りの強さ・複雑さ
風味や後味の長さ
全体のバランスと将来性(熟成しておいしくなるかどうか)

といった評価で加点していくのです。高得点のワインは全体の割合からすると数%しかないとされていて、パーカーポイント100点のワインは滅多に出てきません。ワインの好みは人それぞれ。結局は飲んでみるまで味はわからないといっても、毎年世界中で生産されているワインをすべて飲み比べるなんて不可能です。でも、できれば好みに合わないワインは買いたくないし、安くておいしいワイン、記念日やプレゼントに適したワインを選びたいはず。

そこで役立つのが、世界的に有名なワイン評論家がつける「パーカーポイント」の点数なのです。少なくとも、パーカーポイントの高いワインは、パーカー氏が気に入るような風味のワインだという保証があります。まったく何も情報がない状態でワイン探しをするより、なにかしら評価があったほうがお目当てのワインを見つけやすいです。

ソムリエやワイナリーの関係者だって、世界中のワインを知っているわけではありません。ワインの世界ではさまざまなコンクールを開いたり、プロのテイスターを招いての評価イベントをしたりしてワインの評価をしています。しかし、あらゆるコンクールや評論家の意見を抑えて、一番信頼されているのが、ロバート・パーカー氏の「パーカーポイント」なのです。

なお、ワインの世界で一番信頼されている評価方法はパーカーポイントですが、同じくらい「ワインスペクテーター」というワイン雑誌の評価点も参考にされています。ワインスペクテーターと、パーカーポイントの載っているワイン・アドヴォケイトは同時期に創刊されたライバル誌。若干評価の基準が異なるため、気になる場合はパーカーポイント高得点のワインとワインスペクテーターの点数が高いワインをいくつか飲み比べてみて、より自分の好みに近いほうを参考にするといいでしょう。

ロバート・パーカーって何者なの?

世界中でもてはやされているパーカーポイントですが、極端なことをいうと、パーカーポイントなんて「いちワイン好きが、好き勝手につけたワインの感想」です。

よく知らない海外のワイン評論家がつけた点数なんて、本当に信頼できるのかと思う人もいるでしょう。しかし、ロバート・パーカー氏がワインに何点をつけるかを、世界中のワインラヴァーとワイナリーが注目しています。

どれくらい注目しているのかというと、パーカーポイントが1点変わっただけで、ボルドーのワイナリーが売り出し価格を変えるくらい。

パーカーポイントをつけているロバート・パーカー氏は、「世界でもっとも影響力のあるワイン評論家」とまでいわれています。ワイン好きどころか、ワインの生産者やプロのテイスターから高く評価されている人の評価だからこそ、「パーカーポイントが高い」ことがワインにとって大きな箔付けになるのです。

では、どうしてロバート・パーカー氏の採点に世界中が注目するのでしょうか。その理由を説明するために、ロバート・パーカー氏が世界でもっとも影響力のあるワイン評論家になるまでの道筋を見ていきましょう。

ロバート・パーカーとワインとの出会い

ロバート・パーカー氏がワインと出会ったのは、のちに結婚するパトリシアさんが留学していたフランスのアルザス地方。パトリシアさん18歳の誕生祝いでワインを飲んだのが、生まれて初めてのワイン体験だったそうです。

それから、ロバート・パーカー氏はワインにドハマリ。地元アメリカに戻るとワイン同好会を立ち上げ、ワイン代で生活費を圧迫するくらい飲みまくっていたなんて噂も。毎年のようにヨーロッパへ足を運び、各地のワインを楽しんでいたのだとか。ただ、この時点ではワイン関係の仕事をしているわけではありません。

ロバート・パーカー氏はアメリカの大学で弁護士資格を取得し、農業信用金庫(銀行)に就職します。

ワインの流行と合わせてワインのニュースレターをはじめた

ロバート・パーカー氏がロースクールを卒業し、就職したのが1973年から1974年のあたりです。当時のアメリカは、緩やかな経済成長の真っ只中。少しずつ庶民の暮らしにも余裕が出てきているものの、ワインはどちらかというと富裕層の飲み物でした。業者側もどんなワインを扱えばいいのかわからないし、飲む側もどのワインを飲めばいいのか知らなかったのです。

しかし、1976年にフランスのパリで開催されたアメリカ建国200周年の記念行事で、アメリカワインとフランスワインのテイスティングイベントが開かれます。当時からフランスワインはワインの王様で、アメリカのワインなんて到底及ばないと思われていましたが、結果は赤ワインも白いワインもカリフォルニアの銘柄が独占。建国イベントでフランスワインに勝ったことで、ワインはアメリカ国内で富裕層以外にも一気に広まりはじめます。

そんな中、ロバート・パーカー氏は就職直後の1975年前後に個人的にワインのガイドブックを書きはじめ、1978年にはのちに「ワイン・アドヴォケイト」へと改名するワインレビューのニュースレター「ボルティモア・ワシントン・ワイン・アドヴォケイト」をつくり出したのです。

※ボルティモアは、当時ロバート・パーカー氏が住んでいた場所の名前

カリフォルニアワインがフランスワインに勝ったとはいえ、まだまだ世界的にはフランスワイン至上主義がほとんどで、安いワインや安くおいしいワインの評論はそれほど普及していませんでした。安くてうまいワインに見向きもしない当時の評論を面白くないと感じたロバート・パーカーと仲間たちは、ブラインド・テイスティングでワインに100点満点方式の採点をするようになります。

現代のイメージでいえば、食べログにミシュランの星付きワインしか載っていない状態で、一流グルメからB級グルメまで食べまくる有名レビュワーが登場したようなものでしょうか。本業の合間を縫ってはじめたニュースレターの発行数は、じわじわと購読者を伸ばしていきます。それでも世界的には無名だったロバート・パーカー氏ですが、転機は1982年に訪れました。

プリムール・テイスティングでの評価で一気に名テイスターへ

通常、ワインは出荷できるようになるまで長い時間がかかります。ワインの生産者は、ワインを売るまで現金収入が入ってこないため、ワイナリーの経営は決して楽ではありません。そこで、他人の造ったワインやぶどうをブレンドして売る「ネゴシアン」と呼ばれるワイン生産者や、ワインの評論家、地元で有名なワインラヴァー等を招いて新酒の状態をチェックしてもらい、「ワインの事前・予約販売」をするようになったのです。

ワイナリー側は、ワインを熟成させるまえにある程度の現金を手に入れられる、ワイン好きたちは評判のいいワインが高騰するまえに蔵出し価格でワインを予約できる、こうしたイベントを「プリムール」と呼びます。

長期熟成型のワインが多いフランスのボルドーでも、もちろんプリムール・テイスティングが行われていました。

そんな中、1982年のプリムール・テイスティングで、ロバート・パーカー氏は大物評論家たちを差し置いて「1982年はめちゃくちゃ長熟する素晴らしい年だ!」と高評価したのです。一般的に、何十年も寝かせておいしくなる長熟型のボルドーワインは、仕込んですぐだとタンニンも強く複雑さもないため、あまり飲みやすものではありません。また、アイスワインのように極端に糖度が高かったり、酸が強かったりするワインでないと、長く寝かせている間に風味がスカスカになってしまいます。

若いうちから果実味があって飲みやすいボルドーワインは、長熟しないとされていたのです。1982年はまさに早いうちから飲んでおいしいタイプだったとされていて、当時ロバート・パーカー氏がつけた評価は大きく注目されました。

推測にはなりますが、

「おいおいアイツ、1982年が当たり年なんてどうかしてるんじゃないか」

といった注目だったのでしょう。

しかし、ロバート・パーカー氏の評価通り、1982年のワインはものすごい当たり年だという評価を得て高騰。パーカー氏を信じてワインを仕入れていた業者が大儲けをしたため、「ロバート・パーカーのテイスティング能力はすごい」と有名になったのです。ついでに、ロバート・パーカー氏が発行していたワインのニュースレターにも注目が集まり、「100点満点評価でわかりやすい」といった強みがあったため、小売店やワイナリーからも目をつけられるようになりました。

ワインの売り手である各店舗にとっても、「あのパーカーポイント○点」「PP○点」というポップをつけるだけでワインを目立たせられるパーカーポイントは、便利な広告手段だったのでしょう。その結果、ロバート・パーカー氏の評価は世界中でワインの指標として使われるようになり、就職してから約10年後の1984年には会社を退職し、ワイン関連のビジネスに集中するようにもなっています。ワイン・アドヴォケイト誌は、世界37カ国で多くのワインラヴァーに愛読される超有名雑誌にのし上がったのです。

多くの人から支持されていて、実績もあるワイン評論家だからこそ、パーカーポイントやロバート・パーカー氏のコメント次第でヴィンテージの評価やワイナリーの売り出し価格まで左右されています。

パーカーポイントが世界で信用されている理由

プリムール・テイスティングにおける高いテイスティング能力で注目を集めたロバート・パーカー氏ですが、パーカーポイントが世界中で信用されるようになった理由はもうひとつあります。

それは、雑誌の運営方針です。

ロバート・パーカー誌が手がけるワイン・アドヴォケイト誌には、ワイナリーやワイン関連業者の広告が一切ありません。スポンサーがつくと、どうしてもスポンサーに配慮した採点やテイスティング結果になってしまうため、面倒なあれこれに悩まされないように、あえて広告を断っているのです。

だからこそ、ワイン・アドヴォケイト誌では、新世界にある無名ワイナリーが手がける1,000円台のワインとフランスの歴史あるワイナリーの高級ワインが同じように評価されています。広告なしという商売っけのなさ、旧世界だけでなく新世界を含めたさまざまなワインのテイスティングコメントを見られることが好意的に評価されているため、パーカーポイントは実質世界で一番信用されているのです。

ちなみに、ワイン・アドヴォケイトのライバル誌である「ワインスペクテーター」も、ほぼ同等の評価を受けています。ただ、ワインスペクテーターは広告つきの雑誌です。スポンサーがいる以上多少は意見に配慮する必要もあるという面で、どちらかといえばワイン・アドヴォケイトのパーカーポイントを信頼できると考えられています。

また、ロバート・パーカー氏は基本的にテイスティングするワインは自費で購入しています。もちろん、「評価してほしい」という理由で全世界のワイナリーからロバート・パーカー氏のもとへワインが贈られてくるようですが、それでも「お金をもらって相手を気遣ってまでワインを評価しない」という氏の方針も、パーカーポイントの信頼性アップに一役買っているでしょう。

『パーカーポイント』でわかること

PP高得点のワインは濃くて主張の強いワインが多い

パーカーポイントは、世界で一番有名なワイン評論家がつける評価です。ただ、どれだけ有名なワイン評論家の意見でも、結局は「個人の好み」でしかありません。

そのため、パーカーポイント高得点のワインは、

アルコール度数が高くアタックが強い
香りが華やか

なものが多いです。ロバート・パーカー氏によると、1年間で10,000本以上のワインを試飲して採点しているそうなので、口に入れた瞬間に香りの広がりやすいアルコール度数高めのワイン、印象に残りやすい華やかなワインが高く評価される傾向にあります。

濃ゆうま系ワインを探しているときは、パーカーポイントの高いものを選べば好みに合ったワインと出会える可能性が高いです。

まとめ

お店でワインを眺めていると、一度は目にする「ロバート・パーカー」や「パーカーポイント」といったポップ。パーカーポイントは世界で一番有名なワイン評論家、ロバート・M・パーカーJr氏ががつけるワインの得点です。本人は2016年にワイン業界からの引退を表明しており、徐々にワインスペクテーターの点数がついた銘柄も増えていますが、それでもパーカーポイントについて知っているとワイン選びが楽になります。

パーカーポイントの高いワインは、濃うまでワイン初心者にとって飲みやすい銘柄が多いため、濃いワイン、がっつりとしているけどタンニンや酸はそれほど強くないワインを飲みたくなったら、パーカーポイントの高いワインを選んでみてください。